近年のソフトウェア開発では、スピードと品質の両立が求められています。加えて、コスト削減も求められていることから、テスト自動化が注目されています。
本記事では、テスト自動化に興味のある方、これからテスト自動化に取り組もうとしている方に向けて、テスト自動化の概要について解説します。

アジェンダ

  1. テスト自動化とは?
  2. UIテスト自動化の全体像
  3. UIテスト自動化のこころがまえ
  4. UIテスト自動化のメリット
  5. UIテスト自動化のデメリット
  6. 自動テストに向いているテストと向いていないテスト
  7. まとめ

テスト自動化とは?

テスト自動化は、ソフトウェアやアプリケーションのテストプロセス全体を自動化することを指します。
これまで手動でおこなっていたテスト作業を自動化することで、効率的にテストを実行し、品質を向上させることが目的となります。

テスト自動化では、単体テスト・結合テスト・システムテスト・受入テストなど、さまざまなレベルのテストの自動化が考えられますが、本記事では一般的にシステムテストや受入テストで実施される UIテスト自動化 について紹介します。
UIテストとは、アプリケーション画面のユーザーインターフェース(UI)に対し、ユーザーが実際に行う操作や入力を自動化し、アプリケーションの振る舞いや表示が期待どおりであるかを確認するテストとなります。これにより、ユーザーが直接操作する部分における品質を確保することができます。

※参考記事:E2Eテストとは?

UIテスト自動化の全体像

UIテスト自動化で効果を出すためには、適切な計画と実装、そして作成したシナリオを長期的に運用していくことが求められます。
テスト自動化プロジェクトは、以下のようなフェーズで進めることができます。

各フェーズの詳細については、次回以降の記事で解説します。

テスト自動化のこころがまえ

テスト自動化は、人が行う作業を機械が休まずおこなうようなイメージで、非常に大きな期待を持って取り組まれる方がとても多いです。
テスト自動化ツールはあくまで「ツール」であり、決まりきった操作やシステム的な処理をおこなうことを得意としていて、曖昧な指示を読み取る、人の代わりに判断するといったことはできません。
テスト自動化ツールができること/できないことを正しく理解し、適切な使い方をすることが、テスト自動化成功への近道と言えます。

UIテスト自動化のメリット

UIテスト自動化ツールを導入することで、以下のような多くのメリットが見込めます。

  • 効率性の向上:UIテストの自動化により、手動でおこなっていたテスト作業の時間が削減されます。いちど作成したテストは繰り返し実行することができ、テスト結果が自動的に生成されるため、開発者や品質保証チームの負担を軽減します。
  • 網羅性の向上:UIテストの自動化により、多くのテストケースを短時間で実行することができます。これにより、これまで手動テストで対応しきれなかったアプリケーションのさまざまな機能やシナリオを網羅的にテストすることが可能となります。手動でテストする場合に比べて、テストカバレッジが向上します。
  • 一貫性の確保:自動化されたUIテストは、一貫性を持って実行されます。これにより、人的ミスが現象し、テスト結果の信頼性が向上します。
  • 早期のバグ検出:自動化されたテストは、繰り返し実行することができるため、変更や修正が行われた場合にすぐにテストを実行することで、問題を早期に発見することができます。

※参考記事:開発者がおこなうテストのメリット

UIテスト自動化のデメリット

UIテスト自動化で得られるメリットは多い一方で、以下のようなデメリットも存在します。

  • 初期導入費用の発生:テスト自動化ツールを導入する場合、最初に環境構築が必要となり、ツールの知識習得のための学習コストも発生します。
    UIテスト自動化は、長期的にツールを使用して自動化に取り組むことで費用対効果が見込めますが、初期導入時はコストが発生します。
  • メンテナンスコストの増加:テストシナリオのメンテナンスにコストがかかります。
    UIの変更や機能の追加に伴い、テストシナリオを更新する必要があります。また、新しいテストケースを追加する際にも追加の作業が必要です。
  • テストシナリオの制約:ツールを使用する場合、ツールによって柔軟性に制約があります。
    特定のシナリオを再現することが難しい場合もあるため、どこまで自動化するかを検討する必要があります。

※参考記事:E2Eテストの長所と短所

自動テストに向いているテストと向いていないテスト

すべての操作が自動化に向いているわけではなく、自動テストには向き・不向きがあります。
自動テストに向いているテストと向いていないテストとして、以下があげられます。

自動テストに向いているテスト

  • 頻繁に繰り返しおこなわれるテスト
    作成したテストは実行回数が多いほど、自動化による費用対効果を得ることができます。無影響確認テスト(リグレッションテスト)などがテスト自動化に向いています。
  • 決まった操作かつ、期待値がはっきりしているテスト
    テストツールは決まった操作を得意としています。決まった操作かつ、機械的に結果を判断できるテストは自動化に向いています。
  • 大量のデータ入力操作をおこなうテスト
    手動では難しい量のデータを流し込む場合、自動テストでは機械的に流し込むことができます。複数パターンのデータを流し込むような場合には、テスト自動化に向いています。

自動テストに向いていないテスト

  • テストの実行回数の少ないソフトウェアのテスト
    自動化にかけたコストを回収する前に開発が終了してしまうと、自動化による費用対効果が得られないため、自動化に向いていません。
  • 複雑な分岐など作りこみが必要なテスト
    複雑すぎるテストは保守性が低くコストがかかるため、自動化によるコスト削減効果が得られない可能性が高く、自動化に向いていません。
  • デザインの良し悪しやユーザビリティのテスト
    感覚的な部分を自動的に判定することはできないため、自動化に向いていません。

これらの自動テストの向き・不向きを理解したうえで、自動化に向いているテスト(操作)を自動化することが成功への近道となります。

※参考記事:テスト自動化における 10 のベスト プラクティス #1: 何を自動化するか

まとめ

本記事では、初めてテスト自動化に取り組む方に向けて、テスト自動化の概要、メリット・デメリット、テスト自動化の向き・不向きについてご紹介しました。
テスト自動化を始める前に、まずはテスト自動化の全体像や特性を理解したうえで取り組むことが、成功への第一歩となります。

Ranorexは、デスクトップアプリWebアプリモバイルアプリに対応したUIテスト自動化ツールです。
多くのサードパーティー製コントロールなど、さまざまなテクノロジーをサポートしており、いつも通りの画面操作をするだけで操作をキャプチャし、テストシナリオを自動生成するため、プログラミングをおこなわずにテストを作成できます。GUI上での操作となるため、メンテナンスもおこないやすく、直感的に操作できる特徴を持っています。また、ハンズオンなどのサポート体制も充実しており、ツール導入がしやすい環境を提供しています。

次回以降の記事では、UIテスト自動化の全体像で記載している各フェーズごとの取り組み内容について、より詳しくご紹介します。
Ranorex でテスト自動化に取り組む方はもちろん、他のツールでテスト自動化を取り組む方にも有益な情報ですので、ぜひ参考にご覧ください。

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