テスト自動化を導入する際、いきなり大規模なテストを作成・実行するのではなく、スモールスタートから始めることが重要です。テスト設計で定めた自動化用のテスト構成を基に、小さな単位から始めることで、問題を早期に発見し修正でき、テストの品質を保ちながら進められます。また、リソースやツールの適切な活用法を段階的に学べるため、無駄なく効率よく進めることができます。
この記事では、テスト作成・実行の段階的なアプローチとしてのステップを解説します。
テスト自動化とは?
テスト自動化は、ソフトウェアやアプリケーションのテストプロセス全体を自動化することを指します。
これまで手動でおこなっていたテスト作業を自動化することで、効率的にテストを実行し、品質を向上させることが目的です。
今までのテスト自動化通信では、テスト自動化の概要を始めとし、テスト自動化の進め方についてご紹介しています。
今回の記事では、UIテスト自動化の全体像におけるシナリオ作成(実装)とテスト実行・修正について解説します。

テスト自動化のテスト作成・実行とは
テスト自動化をおこなうには、自動化用のテストスクリプトを作成する必要があります。テスト設計で決定した自動化対象のテストケースを基に、スモールスタートでテストスクリプトを作成していきます。ツールによってテスト作成方法は異なり、テストコードを自分で記述する方法や、GUI操作を録画してテストスクリプトを生成する方法などがあります。テストスクリプトが作成できたら、それを実行することで操作や検証が自動化され、テストが実施されます。テスト実行については、初めはローカルマシンなどの単一の環境でテストを実行し、うまくいったらテスト対象の環境数を増やしていくと、運用がしやすくなります。
テスト自動化のテスト作成・実行の流れ
テスト作成・実行の流れは、大きく6つのステップに分けられます。それぞれのステップにおいて、何をおこなうべきかを順を追って見ていきましょう。今回は、テクマトリックス株式会社で取り扱っている Ranorex を例に説明します。使用するツールによって機能や特徴が異なるため、こちらの説明はあくまで参考としてご参照ください。
Step1. 環境を構築する
まずは、テスト作成・実行するための環境を構築します。ご利用の自動化ツールのソフトウェア要件・システム要件を満たす必要があります。テストを実行するためのソフトウェアやツールのインストールも含まれます。また、テスト対象のアプリケーションやシステム構成も確認しておくことが重要です。
環境構築のチェックポイント:
- 稼動環境を満たしていること ※Ranorex:稼働環境
- ツールがインストールできること
- ツールを動作させるためのソフトウェアがインストールされていること
- テスト対象のアプリケーションが動作すること
- テスト実行用のデータを事前に用意すること
Step2. テスト自動化とツールについて学習する
自動化ツールを有効活用するために、テスト自動化やツールに関する基礎的な知識を学びます。QAチームやチームリーダーをはじめとするマネジメント層が、メンバーの学習体制を整えることで、知識習得がスムーズになり、より効果的に自動化ツールを活用できます。また、ツールの提供する学習資材や、自社で作成したガイドラインなどを一元化し、学習フローを明確にすることで、新しいメンバーの加入や担当者変更時に役立ちます。
学習で重要なポイント:
- テスト自動化について知る ※Ranorex:テスト自動化通信
- ツールの基礎知識を身に着ける ※Ranorex:ハンズオンセミナー(初級)
- QAチームやチームリーダーなどのマネジメント層がメンバーの学習体制を整える ※Ranorex:QAチームから始めるテスト自動化
Step3. テストスクリプトを作成する
テストスクリプトの作成は、テスト自動化の中心的な部分です。テストケースごとに実行したい操作のテストスクリプトを作成し、期待される結果と比較します。Ranorex では、一連の操作や複数のテストケースで共通の操作ごとにテストスクリプトを分けることができます。まずは、一連の操作のテストスクリプトを作成します。
Ranorex は、レコーディングモードでGUI 操作をすることで、操作した内容のテストスクリプトを作成できます。近年(2025年2月時点)の自動化ツールは、このタイプが多いです。

テストスクリプト例 (ホテル予約システムのログイン)
※ホテル予約ができることを確認するテストケースで、ログインのテストスクリプトを作成

- ホーム画面で、ログインボタン(ログイン画面遷移)をクリックする
- ログイン画面で、メールアドレスの入力フォームをクリックする
- ログイン画面で、メールアドレスを入力する
- ログイン画面で、パスワードの入力フォームをクリックする
- ログイン画面で、パスワードを入力する
- ログイン画面で、ログインボタンをクリックする
- マイページ画面のスクリーンショットを撮る
Step4. テストスクリプトの動作確認のテストを実行する
テストスクリプト単体を実行して動作確認をおこないます。この段階で、テストスクリプトが期待通りに動作するかを確認し、問題があれば修正をします。テスト結果のエラーメッセージやログ出力を活用して、テストスクリプトの不具合を特定します。

Step5. テストスクリプトを増やし、テストケース単位で実行する
テストスクリプトが正常に動作することを確認したら、テストスクリプトを増やしていき、テストケース単位で実行していきます。これにより、全体的なシステムの品質をチェックできます。個々のテストケースを実行し、その結果を分析します。

Setp6. 一連のテストケースで全体テストを実行する
すべてのテストケースを作成し、一連のテストケースで全体テストを実行します。これにより、システム全体が正しく動作するかを確認します。CI(継続的インテグレーション)ツールを使用して、ビルドやデプロイ後に自動でテストが実行されるようにするのも一般的です。

まとめ
前回の「テスト設計」に続いて、今回は「テスト作成」と「実行」の具体的な手順を解説しました。テスト自動化を成功させるためには、まず適切な環境構築とツール選定が重要です。そして、テストスクリプトを正しく作成し、実行することで、テストの精度と速度を向上させることができます。特に、テストスクリプトの作成や実行の際には、実行結果の分析をしっかりおこない、継続的に改善を加えていくことが成功の鍵です。
また、全体テストを実行することにより、システム全体の品質を確認できるため、開発チームが自信を持って製品をリリースできるようになります。継続的インテグレーション(CI)ツールを活用することで、さらに効率的にテスト自動化を運用することが可能になります。テスト自動化は単なる技術的な手法ではなく、開発プロセス全体を支える重要な要素です。正しいステップを踏んで実行すれば、テストの品質や開発スピードを向上させることができますので、ぜひ実践してみてください。
UI テスト自動化ツール Ranorex
弊社では、UI テスト自動化ツール Ranorex を取り扱っています。Ranorex は、デスクトップアプリ、Webアプリ、モバイルアプリに対応したUIテスト自動化ツールです。多くのサードパーティー製コントロールなど、さまざまなテクノロジーをサポートしており、画面操作をキャプチャすることで、テストシナリオを自動生成できるため、ノーコードで簡単にテストを作成できます。また、GUI 操作で直感的に操作できるため、メンテナンスも簡単におこなえます。
もし、Ranorex にご興味ありましたら、まずは 製品紹介Webinar にお気軽にご参加ください。製品紹介 Webinar では、Ranorex の概要やデモンストレーション、事例などをご紹介しています。
また、Ranorex は、無料で14日間、体験版を利用いただけますので、実際に使用感を試したい方は、ぜひダウンロードください。
関連情報
テクマトリックス株式会社では、無償で受講できるRanorex ハンズオンセミナー(初級コース)をご用意しています。ハンズオンセミナーでは、 Ranorex の概要や基本機能の使い方について学ぶことができますので、効率的にツール学習できます。
また、今回の記事は、Ranorex を使用したテスト自動化の計画・設計や運用の具体的な進め方を学べる有償トレーニング Ranorex によるテスト自動化ガイド の内容をもとに作成しています。Ranorex を使用したテスト自動化プロジェクトの進め方について、より具体的な知見が欲しい方は、ぜひご参加ください。