初めから多くのテスト環境やシナリオで自動実行しようとすると、うまくいかず挫折してしまうことがよくあります。そのため、まずはスモールスタートで運用を成功させ、成功体験を積みながら段階的に自動テストを増やすことで、チームのモチベーションを向上させつつ、効率的に運用することができます。テスト自動化通信でこれまで解説してきたテスト計画から運用方法を参考に、運用が軌道に乗り始めたら、次のステップとして、CI(継続的インテグレーション)の導入や実行環境の増加、テストケースの追加などをおこない、自動化の効果を最大限に活かせるようにしましょう。
テスト自動化とは?
テスト自動化は、ソフトウェアやアプリケーションのテストプロセス全体を自動化することを指します。
これまで手動でおこなっていたテスト作業を自動化することで、効率的にテストを実行し、品質を向上させることが目的となります。
テスト自動化では、単体テスト・結合テスト・システムテスト・受入テストなど、さまざまなレベルのテストの自動化が考えられますが、本記事では一般的にシステムテストや受入テストで実施される UIテスト自動化 について紹介します。
UIテスト自動化は、アプリケーション画面のユーザーインターフェース(UI)に対し、ユーザーが実際におこなう操作や入力を自動化し、アプリケーションの振る舞いや表示が期待どおりであるかを確認するテストを自動化することです。これにより、ユーザーが直接操作する部分における品質を確保できます。
テスト自動化は、以下のようなステップでおこなうと上手くいきやすいです。

テスト自動化の概要や各ステップの詳細については、テスト自動化通信の過去の記事に載せていますので、ご参照ください。
- テスト自動化の概要:テスト自動化とは?テスト自動化初心者が知っておくべきこと
- Phase1.テスト計画:テスト自動化を成功に導く「テスト計画」の立て方
- Phase1.テスト設計:テスト自動化を支える「テスト設計」のポイント
- Phase1.テスト作成+テスト実行・修正:テスト自動化を実現する「テスト作成・実行」の最適ステップ
- Phase2.テスト自動化運用:テスト自動化の「長期運用」を成功させるために押さえるべきポイント
まずは、上記のステップで、テスト自動化の運用が軌道に乗ることが重要です。軌道に乗り始めたら、よりテスト自動化の効果を最大化するためにPhase 3 自動化の範囲の拡大に移りましょう。
テスト自動化の効果を最大化するためには
テスト自動化の効果を最大化するためには、テストの自動実行、実行環境やテストケースの追加による自動化範囲の拡大をおこなうことが必要です。これにより、自動実行にかかる作業の効率化や手動テストの工数削減を実現し、テスト自動化の効果をより一層向上させることが期待できます。
テストの自動実行
テストの自動実行には、タスクスケジューラーやCIツールを活用することが重要です。タスクスケジューラーを使用する場合、指定時間やファイルの変更などの特定の条件をトリガーとして自動実行できるため、実装が比較的簡単で導入しやすいです。一方、CIツールはソースコードの変更をトリガーとして、ソフトウェア開発の一連の作業を自動化できるため、実装には手間がかかりますが、規模の大きなプロジェクトでは非常に効果的です。
利用イメージ
タスクスケジューラー
1.定期的なテスト実行
例:毎晩午前0時に、システムに問題ないかをチェックするために実行
利用目的:長期運用している重要度の高いシステムに問題ないかを定期的に確認する
2.ソースコードの変更をトリガーにしたテスト実行
例:ソースコードのファイルが更新された場合に、リグレッションテストを実行
利用目的:開発者がコードを更新するたびに、手動でテストを実行する手間を省く
CIツール
1.ソースコードのコミットによる自動ビルドとテスト
例:開発者やテスト担当者がファイルをバージョン管理システムにコミットすると、CIツールがビルドを開始し、自動テストが実行され、開発者にテスト結果をフィードバック
利用目的:開発者やテスト担当者がファイル更新するたびに、ビルドやテストを手動でおこなう手間を省く

実行環境を増やす
実行環境を増やすことで、異なる条件下でのテストが可能になり、テストの網羅性が向上します。これにより、バグの早期発見と品質向上が実現できるだけでなく、手動テストの工数削減に繋がります。基本的には、既存の自動テストを流用して、複数環境でテストがおこなえます。
クロスブラウザー
Webアプリのテストで、複数ブラウザーでテストする
- Chrome
- Firefox
- Edge
- Safari
クロスデバイス
モバイルアプリのテストで、機種やOSバージョンが異なる複数のデバイスでテストする
- Android (複数機種あり)
- iPhone
- iPad
複数のOSバージョン
主にデスクトップアプリのテストにて、複数のWindows OS バージョンのPCでテストする
- Windows 7
- Windows 10
- Windows 11
クラウド環境
クラウド環境にて、デスクトップアプリやWebアプリをテストする
- Amazon Web Services (AWS)
- Microsoft Azure
- Google Cloud Platform (GCP)
仮想環境
仮想環境にて、デスクトップアプリやWebアプリをテストする
- VMware
- Microsoft Hyper-V
- Oracle VM VirtualBox
リモート環境
別のマシンにリモートでアクセスしてテストする
- Windowsのリモートデスクトップ接続
- VNC
- 自動化ツールの機能におけるリモート接続
テストケースを増やす
テストケースを増やすことで、自動化のカバレッジが広がり、より多くのシナリオを検証できるようになります。これにより、手動テストの負担が軽減され、品質の向上とバグの早期発見が可能になるため、テスト自動化の効果を最大化することに繋がります。どのテストを自動化するかについては、テスト自動化の「テスト計画」に関する記事を参考にして決めると良いでしょう。また、テスト作成に慣れてきたら、条件分岐やコーディングが必要な難易度の高いテストの自動化も検討してみましょう。

まとめ
テスト自動化を活用すると、手動テストにかかる時間やコストを減らし、ソフトウェアの品質向上が期待できます。作成したテストを自動実行することで、ソフトウェア開発の一連の作業を自動化できるため、より作業効率を上げることができます。また、実行環境やテストケースを段階的に増やすことで、テストカバレッジが広がるため、さらにテスト自動化の効果を最大化することができます。
テスト自動化を一過性の取り組みではなく、テストの自動実行やテストの追加などで、自動化の効果が最大限に引き出せるように長期的な運用を見据えて取り組みましょう。
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