テスト自動化の課題トップ10
どのIT組織にとっても、テストの自動化なしにDevOpsを効果的に実行することは困難です。しかし、多くの場合「言うは易く行うは難し」です 。
自動化されたソフトウェアテストにおける課題は、製品リリースを遅らせたり品質に影響を与えたりする場合があり、DevOpsの全体的な目標とは正反対の結果になりかねません。
テスト自動化に関して開発者が直面する最大の課題と、それを克服する方法について見ていきましょう 。
1. 適切なツールを選択する
市場に出回っている自動テストプラットフォームの数の多さには、すぐに圧倒されてしまいます。
選択を誤ると、開発チームは非効率な状況に陥り、時間とコストを浪費する可能性があります。
その結果、自動化の取り組みが失敗し、全社レベルで再挑戦することに消極的になってしまいます。
では、適切な製品を確実に見つけるために、開発チームは何をすればいいのでしょうか?
まずはプロジェクトの具体的なニーズを評価することから始めましょう。テスト対象は、Webアプリケーションなのかデスクトップアプリケーションなのかなど、関連するテクノロジーを検討する必要があります。Seleniumのようなフレームワークは、どちらのタイプにも役立ちます。また、開発チームは必要なサポートクラウドサービスについても検討する必要があります。
自社のテクノロジーを理解したら、次は自動化する必要があるテストの種類を考えます。これには次のものがあります。
- 機能テスト
- 単体テスト
- パフォーマンステスト
- セキュリティテスト
これで、さまざまなプラットフォームが提供する機能や性能を評価し始めることができます。直感的なインターフェイスを持つプラットフォームがあれば便利です。コードレスプラットフォームは、特定の言語の知識を必要としないため、導入が簡単です。そのため、さまざまな開発経験を持つユーザーが同じツールを簡単に使用できるようになります。
テスト自動化ツールを選択する際に考慮すべきその他の事項には、以下のようなものがあります。
- さまざまなプラットフォームやデバイス間でのテストのサポート
- アジャイル手法などの最新のプラクティスを扱う能力
- オープンソースと商用ツールそれぞれの長所と短所
- ベンダーのサポートが十分かどうか
- ライセンス料やサブスクリプション料を含め、ツールの所有にかかる費用
- 利用可能なセキュリティ機能
2. 優秀な自動化エンジニアを見つける
企業は、自動テストフレームワークの開発、実装、保守を監督できる有能な自動化エンジニアを必要としています。
アジャイル手法や DevOpsプラクティスを採用する組織が増えるにつれて、そのような背景を持つ人材の需要も高まっています。
この役割を担うことができるのは、一般的にプログラミングの経験があり、Python、C#、Java などの言語に精通した人材です。また、DevOpsと継続的インテグレーション (CI) 継続的デリバリー (CD) パイプラインを理解していることが理想的です。
この人材不足を克服するために、次のような方法を取ることができます。
- 新卒者向けにテスト自動化を学ぶための研修制度を設ける
- 競争力のあるボーナスと給与を提供する
- 包括的な福利厚生パッケージを提供する
- LinkedInなどのネットワーキングサイトで適格な候補者に直接アピールするなど、高度な採用戦略を活用する
組織がこの課題を克服できるもう1つの方法は、社内で候補者を育成することです。従業員のスキルを高めるための社内研修プログラムを設定すれば、長期的には成果が得られます。企業は、ISTQBやASTQBなどの団体が提供する認定コースを受講するよう、有資格者に奨励することもできます。
時間をかけて有機的に人材を育成することで、テスト自動化エンジニアを必要とするプロジェクトに活用できる優秀な人材のパイプラインを常に確保できます。これらのスキルは、ITの他の分野でも役立ちます。
3. テストデータの管理
オンラインで入手できる情報が増えるにつれて、データのプライバシーと保護が大きな懸念事項になっています。多くの企業は、アプリケーションの機能とパフォーマンスを検証するために、インターネットを利用してテストデータを収集しています。その情報を適切に扱うことは、テスト自動化の有効性に影響を与えかねない多くの課題をしばしばもたらします。
たとえば、データスクレイピングツールを使用してデータを取り込む場合、GDPR、CCPA、HIPAAなどの規制で保護されている情報を収集するリスクがあります。個人を特定できる情報 (PII) の取り扱いを誤ると、深刻な法的問題に発展する可能性があります。
そのため、企業は以下を提供できる自動化ツールを必要としています。
- データのマスキングと匿名化:機密データを公開することなく、機密情報を隠して本物らしく見せます。
- 暗号化:保存済みまたは転送中のデータの不正な閲覧を防ぐためにデータを保護します。
- アクセス制御:データへのアクセスを許可された担当者のみに制限します。
今日の世界では、膨大な量の情報が入手可能であるため、大量のテストデータを管理する必要があります。企業には、効果的なテストに必要な特性を維持しながら、より小さなデータセットを作成するツールが必要です。機密情報を含まない合成データジェネレーターの設定も検討する必要があります。
その他のデータ管理に関する考慮事項は以下のとおりです。
- データを最新かつ関連性のある状態に保つ
- 異なる環境間でデータの依存関係を確実に維持する
- 開発ライフサイクルのさまざまな段階でデータの一貫性と可用性を確保する
4. 継続的インテグレーションと継続的デプロイメント (CI/CD)
現代のIT部門は、CI/CDプロセスを使用して、高品質の製品を迅速かつ効率的に提供しています。しかし、多くの部門がCI/CDパイプラインで安定した信頼性の高いテストを維持することに苦労しています。この状況を克服する1つの方法は、すべてのテストを独立させて、互いに干渉しないようにすることです。
根本的なテストの問題を特定して修正するために根本原因の分析をおこなうこともお勧めします。また、一時的な障害に対処し、CI/CDでの不適切なテストの影響を軽減するために、リトライの仕組みを追加する必要があります。
プロジェクトの規模が大きくなると、必要な自動テストの数が大幅に増える可能性があります。その結果、ビルド時間が長くなり、フィードバックループが遅くなります。これを克服する方法として、次のようなものがあります。
- 重要なテストを優先して実行し、フィードバックを迅速に得る
- 並列テスト実行を使用して、さまざまなマシンにテスト負荷を分散し、実行時間を短縮する
- 最近の変更の影響を受けるテストのみを実行する増分テストを実行する
5. テストスクリプトの保守
開発チームは、自動テストの信頼性を確保するためにテストスクリプトを使用することはよくあります。アプリケーションが進化するにつれて、その変更を反映するためにスクリプトを更新する必要があります。スクリプトを更新しないと、アプリケーションの評価の精度を確保するのが難しくなります。
頻繁に変更が発生するアプリケーションを扱っている場合は、テストを再利用可能なコンポーネントに分割したモジュール式スクリプトの使用を検討してください。これにより、アプリケーションの更新時に必要な変更の数を減らすことができます。
アプリケーションの変更箇所に基づいてテストスクリプトを自動的に更新するツールもあります。その多くは、AIや機械学習を使用してスクリプトを新しいUIの更新に適応させます。
6. テスト自動化の拡張
自動テストの数が増えると、実行時間が長くなり、オーバーヘッドが大きくなる可能性があります。これを克服する1つの方法は、テストスイートを定期的にレビューして、冗長なテストや古いテストを削除することです。そうすることで、メイン機能をカバーするスリムで効率的な テスト スイートが残ります。
また、自動テストの増加に対応できるインフラも必要です。クラウドサービスは、さまざまな負荷に対応するために環境を迅速に拡張できる柔軟性を提供します。
開発チームは、異なるマシンまたはノードにテストを同時に分散することも検討する必要があります。さらに、テストスイートを単一のプラットフォームに集中させることで、データのプロビジョニングと保守の必要性を簡素化できます。
7. 複数のプラットフォームでのテスト
多くのIT組織では、複数のオペレーティング システム (Windows、OS、Linux)、デバイス、Webブラウザーをサポートする必要があります。プラットフォームごとにアプリケーションの動作に影響を与える癖や特性があるため、テストの自動化は複雑になります。
この課題に対処する最善の方法は、複数のWebブラウザーやデバイスで動作するクロスブラウザーテスト ツールに投資することです。また、レスポンシブデザインの原則を使用して、アプリケーションがさまざまな画面サイズや解像度に適応するようにすることも有効です。
異なるプラットフォーム間での懸念に対処するその他の方法としては、以下があります。
- 一般的に使用されるデバイスのパフォーマンスをテストするためのデバイスラボを設置する
- エミュレーターを使用して初期テストを実行し、さまざまなデバイスの状態を再現する
- さまざまなデバイスの重要な機能をカバーするために自動テストスイートを利用する
8. テクノロジーの変化
どんなに経験豊富なITプロフェッショナルでも、すべての新しい変更に対応するのは困難です。テストの実行方法に革命をもたらすと期待される新しいフレームワークやテスト ツールは常に登場しています。
また、新しいプラットフォームやフレームワークを定期的に評価して、それが新しいプロジェクトに適しているかどうかを判断することもお勧めします。これには、概念実証 (PoC) を実施して、新しいソリューションを採用することがどの程度現実的であるかを判断することも含まれます。新しいツールがレガシーシステムを含む既存のテクノロジーと容易に統合できるかどうかを判断することも含まれます。
9. 自動化の成功の測定
ほとんどの企業にとって、自動化の成功を判断するうえで最も重要な課題は、どの指標を使用するかを決定することです。企業の目標やその他の組織目標、テスト目標に直接合致する指標を探してください。これには次のようなものが含まれます。
- 全体的なテストカバレッジ
- 欠陥検出率
- テスト実行時間
プロジェクトや関係者のニーズに合わせてカスタマイズされた指標を開発することもできます。ROIを求める場合は、自動化ツールを使用するコストと、テスト時間を短縮して他のプロジェクトのリソースを確保するなどのメリットを比較する費用対効果分析を実行します。
10. スピードと品質のバランス
すべてのテストを実行しないようにすることで、大規模で複雑なテスト スイートで行き詰まることを回避できます。その代わりに、変更したコードによって影響を受けるテストに重点を置きます。欠陥が発生しやすいアプリケーションの最も重要な領域のテストに、より多くのリソースを割り当てます。そうすることで、品質を保証しながらテストの取り組みを最大限に活用できます。
スピードと品質のバランスを取るもう1つの方法は、CI/CDパイプラインで実行される自動テストをセグメント化することです。各セグメントでは、さまざまな段階で異なる種類のテストを実行する必要があります。問題をすばやく特定して対処できるように、必ずフィードバックループを設定してください。
この記事は、開発元 Ranorex 社 Blog 「The Top 10 Test Automation Challenges」2024年9月10日の翻訳記事です。)